56■時価の判断は?A土地は鑑定士の評価額が18,000万円、B社の希望価格が25,000万円である。この場合、B社土地の鑑定額は20,000万円、建物5,000万円であるため、客観的時価の差額は7,000万円である。時価のいずれか高い方(25,000万円)の20%を超えるが、交換の特例は使えるか?■建物付き土地と土地の交換は可能か?建物部分は交換差金となります。従ってこの交換は■A氏はB社社宅を交換後すぐ売却するが、同一用途に供するという要件に反するのでは?交換の特例では「交換取得資産は、交換譲渡資産の譲渡直前の用途と同一の用途に供すること。」との要件があります。しかし、A氏はB社社宅を交換後すぐC氏に売却します。B社は交換後同一用途に供します。すなわちA氏は交換の特例をとる意思はありません。B社は、同一用途に供する要件は満たしています。交換の当事者のいずれかが同一用途に供して、もう一方の当事者が交換の特例をとらなくても、この特例はその者ごとに判定することになります。■法人と個人の交換は可能か?所得税法58条では「居住者が各年において、1年以上有していた固定資産を他の者が1年以上有していた固定資産と交換し…」とあります。相手を個人と限定してはいません。一方法人税法50条でも「内国法人が、各事業年度において、…それぞれ他の者が1年以上有していた固定資産で…」とあります。これも同様です。解 説〔所得税基本通達58-12〕固定資産の交換があった場合、交換当事者間において合意されたその資産の価額が、交換するに至った事情に照らし合理的に算定されていると認められるものであるときは、その合意された価額が通常の取引価額と異なるときであっても、所得税法58条の規定の適用上、その資産の価額はその合意したところによるものとする。すなわち両者の合意が時価であるということになります。25,000万円と同様です。5,000万円≦25,000万円×20%で要件は満たすことになります。A氏は交換の特例をとる場合には交換差金として受け取る5,000万円に譲渡所得税が生じます。この交換で、B社は「固定資産の交換の特例」の要件を満たします。A氏は交換の特例はとらず一般譲渡とします。この特例は隣接地の買収やいわゆる開発用土地の買収などにも用いられます。しかし、譲渡所得税・住民税の節税になっても不動産取得税や登録免許税は通常の税率で課税されるので、全ての税コストを計算してから実行してください。(2)問題点の抽出A土地土地B社社宅税金の手引き事業用土地20,000万円交換差金5,000万円Ⅶ. ケーススタディ
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