令和7年度版 税金の手引き 事業用
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受益権の移転64このケースではAさんが委託者=受益者という関係となっていることを前提に説明をいたします。<ケース2>相続後の財産の移転先を決められる家族信託CさんはDさんと再婚し、先祖代々受け継いできた自宅で生活しています。CさんとDさんの間には子供がいませんが、Cさんと死別した先妻との間にはEさん(成人)という子がいます。Cさんは自分が亡くなった後もDさんに自宅を利用させたいと考えていますが、Dさんが亡くなった場合には、自宅を自分の子であるEさんに引き継がせたいと考えています。Cさんは、自宅をDさんに相続させてしまうと、Dさんが亡くなったときに、自宅がDさんの親族に相続され、自分の子であるEさんに引き継ぐことができなくなることを心配しています。委託者をCさん、受託者をCさんの子であるEさん、信託財産を自宅として、CさんとEさんとの間で信託契約を締結します。受益者については、Cさんが生きているうちはCさんを受益者とし、Cさんが亡くなったらDさんを受益者とします。Dさんが亡くなったら信託が終了し、信託終了後の残余財産(自宅)の帰属先をEさんにしておけば、Dさんは、Cさんが亡くなった後も引き続き自宅に住み続けることができ、Dさんが亡くなった後はEさんが自宅を引き継ぐことができます。このように、信託制度を利用すれば自分が亡くなった場合に自分の財産を相続する者を指定するだけでなく、次の相続(自分の相続で財産を相続した者が亡くなったとき)まで指定することもできます。信託契約締結によるメリット解 説■登録免許税所有権移転の登記分は非課税となりますが、信託の登記分は当該不動産(土地・建物)の固定資産税評価額の4/1,000です(土地については2026年[令和8年]3月31日まで3/1,000の特例措置がなされています)。■不動産取得税受託者は信託登記によって所有権の移転を受けますが、登記簿上の形式的な移転に過ぎないという理由で課税されません。■譲渡所得税委託者は受託者に所有権を移転しますが、信託による形式的譲渡で委託者に利益が発生するわけではありませんので、課税されることはありません。■固定資産税信託による所有権移転登記をした翌年以後、不動産の形式上の名義人である受託者に対して、固定資産税の課税通知書が送付されます。受託者が新たに固定資産税の支払い義務を負うことになりますが、実務上は信託財産に関する費用として、信託財産から生じる収益から受託者が支払うことになりますので、実質的には受益者が負担していることになります。■贈与税受託者への所有権が移転しますが、委託者=受益者であれば実質的な財産権の移動(経済的な利益帰属先の変更)はありませんので、課税されません。税金の手引き事業用(受託者)(息子/先妻との子)(委託者)(第一受益者)(妻)(第二受益者)信託譲渡受益権①Cさんが亡くなった後受益権②(残余財産の帰属先)Ⅶ. ケーススタディDさんEさんCさん

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