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ケーススタディ

4.生前贈与の特例の活用

被相続人が生前に財産を贈与すれば、相続財産が減少し相続税額を減少させることができますが、贈与税率は相続税率に比し高い税率になっているため、相続税額を減少させることはできても、贈与税額を含めた納税額を減少させることはできません。しかしながら最近の動向として、生前贈与を奨励する贈与税の特例が数多く作られています。これらの特例をうまく活用することにより、相続対策につながります。

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制度
(方法)
住宅取得資金贈与 教育資金贈与 結婚子育て資金贈与 ジュニアNISA
概要 2023年(令和5年)12月31日までにマイホームを購入する人が親、祖父母から住宅購入資金の贈与を受ける場合に、一定額が非課税となる制度。 2026年(令和8年)3月31日までに親、祖父母などから教育資金の一括贈与を受けた場合に、1,500万円まで贈与税が非課税となる制度。 2025年(令和7年)3月31日までに親、祖父母などから結婚・子育て資金の一括贈与を受けた場合に、1,000万円まで贈与税が非課税となる制度。 2023年(令和5年)12月31日までに未成年者がNISA口座を開設し運用管理は親権者(親、祖父母等)が代理で行う制度。年間80万円(5年間で最大400万円)まで投資をすることが可能です。(口座開設の期限の延長はありません。)

※NISA:上場株式などの売却益、配当等が最長5年間非課税となる制度です。

贈与者 直系尊属 直系尊属 直系尊属 不問
受贈者 18歳以上の
直系卑属
※ 2022年(令和4年)3月31日以前は20歳
30歳未満の
直系卑属
(贈与年の前年所得金額が
1,000万円以下であること)
18歳以上50歳未満の
直系卑属
(贈与年の前年所得金額が
1,000万円以下であること)
※2022年(令和4年)3月31日以前は20歳
0歳~19歳
※2023年(令和5年)1月1日以後は
17歳
贈与財産
  • マイホーム購入資金
  • 一定のリフォーム資金
現金 現金 現金
非課税額 条件に応じて
1,000万円
500万円
条件に応じて
1,500万円
500万円
1,000万円
(うち結婚費用は300万円)
非課税投資枠年80万円
(5年間で最大400万円)
主な注意点 定められた期間の間に贈与をする必要があります。 ── ── 親などがNISAに80万円預入れをした場合、贈与税の非課税枠の残りは30万円(110万円-80万円)となります。
申告義務 贈与の翌年2月1日より
3月15日までに贈与税の申告
開設時は申告不要 開設時は申告不要 開設時は申告不要
相続対策※

ただし、30歳時点で口座に残高が残っていた場合、残高が贈与税の対象となります。また、契約期間中に贈与者が死亡した場合、2019年(平成31年)4月1日以後の贈与については、相続開始3年以内の贈与で一定の要件を満たさないときは、残高が相続税の対象となります。

※2021年(令和3年)4月1日以後の贈与については、一定の要件を満たさないときは残高が贈与税の対象となり、相続税2割加算の対象となります。

ただし、50歳時点で口座に残高が残っていた場合、残高が贈与税の対象となります。また、契約期間中に贈与者が死亡した場合、残高が相続税の対象となります。

※2021年(令和3年)4月1日以後の贈与については、相続税2割加算の対象となります。

ただし、相続開始前3年以内の贈与は、相続財産に加算します(相続により財産を取得しない人は相続財産に加算しません)。※「生前贈与加算」参照

※: ○は相続対策として有効