VII

ケーススタディ

5.特定事業用資産の買換えの特例

(「2.特定の事業用資産の買換えの特例」もあわせてご参照ください。)

(2)法人の特定資産の買換えに係る圧縮記帳制度

■圧縮限度額の計算

・売却物件

売却金額 15億円

土地帳簿価額 7億円

・買換取得物件

土地取得価額 10億円

建物取得価額 5億円

・譲渡費用

5,000万円

■圧縮記帳の仕訳

《法人の仕訳》



現金 15億円 土地 7億円
    固定資産売却益 8億円
譲渡費用 5,000万円 現金 5,000万円


建物 5億円 現金 5億円
土地 10億円 現金 10億円

建物圧縮損

2億円 建物 2億円

土地圧縮損

4億円 土地 4億円

※圧縮限度額

(算式) 圧縮限度額 = 圧縮基礎取得価額 (注1) × 差益割合(注2) ×

80(※)
100

(注1)圧縮基礎取得価額とは、買換資産の取得価額又は譲渡資産の譲渡対価の額のうちいずれか少ない金額をいいます。
また、買換資産が2以上ある場合には、まず、1つの取得資産の取得価額に達するまでの譲渡対価を充て、次にその残額の譲渡対価を別の買換資産の取得価額に達するまで充てます。譲渡対価をどの買換資産の価額から優先的に充当するかは、法人の任意です。

(注2)差益割合={譲渡対価-(譲渡資産の帳簿価額+譲渡経費)}/譲渡対価

(上記例の場合)

圧縮限度額 (建物) = 5億円 × 50% (注) ×

80(※) = 2億円
100
圧縮限度額 (土地) = 10億円 × 50% (注) × 80(※) = 4億円
100

(注)差益割合:

15億円-(7億円+5,000万円)

= 50 %

15億円

《法人の所得》
8億円 (固定資産売却益) - 5,000万円 (譲渡費用) - 6億円 (圧縮損) = 1.5億円

《建物の簿価》
5億円 (建物) - 2億円 (建物圧縮損) = 3億円

《土地の簿価》
10億円 (土地) - 4億円 (土地圧縮損) = 6億円

※地域再生法の集中地域以外の地域から集中地域への買換えについては、→こちらをご参照ください。

解 説

法人税の課税標準となる各事業年度の所得の金額は、その事業年度の益金(収入)の額から損金(経費)の額を控除して算出しますので、固定資産の譲渡益はすべて益金課税となります。しかし、法人が固定資産を譲渡し、その譲渡代金で譲渡した固定資産と同種の固定資産を取得するような場合は、実体的には固定資産の保有状況には特に変化がないことと同じであるため、譲渡はなかったものと考えられます。このように、その譲渡益について直ちに課税することは必ずしも適当でない場合もあります。そこで、法人税法においては固定資産の譲渡益について一定の要件を満たす場合には、直ちに課税せずに、課税を将来に繰延べる制度を設けています。これを圧縮記帳制度と呼んでいます。