VII

ケーススタディ

9.土地と建物の所有者が異なる場合について

(3)借地権の取り扱い

■個人の所有する土地を個人に貸した場合(借りた個人は建物を建築する)
個人の所有する土地を個人に貸した場合

土地の時価 5,000万円

土地の相続税評価額 4,000万円

借地権割合 70%

①乙に無償又は固定資産税相当額以下で貸した場合(使用貸借の場合)

 乙に贈与税が課税されるか

課税されない

②乙に通常の地代で貸した場合

 乙に贈与税が課税されるか

借地権の価額相当額について贈与税が課税される

贈与とされる額

土地の
相続税評価額 

借地権割合

4,000万円× 70%= 2,800万円

なお、相当の地代(土地の相続税評価額(過去3年間の平均額)の6%相当額)を支払っている場合は、土地に借地権の設定がされても更地としての経済的価値が維持されているものと考えられることから贈与税が課税されません。

■ 個人の所有する土地を法人に貸した場合(法人は建物を建築する)
個人の所有する土地を法人に貸した場合(法人は建物を建築する)

土地の時価 5,000万円

土地の相続税評価額 4,000万円

借地権割合 70%

①権利金の支払いがなく、地代の支払いも
ない場合(使用貸借の場合)

 会社は甲から権利金相当額の贈与が
 あったものとして課税されるか

法人は権利金相当額の受贈益として課税される

土地の時価

借地権割合

5,000万円 × 70% = 3,500万円

(会社の処理:仕訳)

借地権3,500万円 / 受贈益 3,500万円

②権利金の支払いがなくても会社が
受贈益課税を受けない方法はあるか

ア)相当の地代を支払う方法
4,000万円 × 6% = 240万円(年額)

イ)甲と会社とが無償返還を約して「土地の無償返還に関する届出書」を提出する方法

■ 法人の所有する土地を個人に貸した場合(個人は建物を建築する)
法人の所有する土地を個人に貸した場合(個人は建物を建築する)

土地の時価 5,000万円

土地の相続税評価額 4,000万円

借地権割合 70%

①権利金の支払いがなく、地代の支払いも
ない場合(使用貸借の場合)

 甲(役員)は会社から利益を受けた
 ものとして課税されるか

権利金相当額の役員賞与として課税される

土地の時価

借地権割合

5,000万円 × 70% = 3,500万円

(会社の処理:仕訳)権利金の認定課税
役員賞与3,500万円/権利金収入3,500万円

会社は損金不算入、所得税の源泉徴収が必要

②権利金の支払いがなくても甲(役員)が
賞与を受けたとされない方法はあるか

ア)相当の地代を支払う方法
4,000万円 × 6% = 240万円(年額)

イ)会社と甲とが無償返還を約して「土地の無償返還に関する届出書」を提出する方法。
この場合、相当の地代相当額(毎月20万円)は、会社からの役員報酬とされる。