VII

ケーススタディ

10.定期借地権(保証金方式・権利金方式・前払賃料方式)の課税関係

(2)権利金方式

■権利金

返還を要しない金銭。受け取った時に一括して収入となります。

■貸主の処理

借地権の設定により権利金等を受け取った場合の課税(個人の場合)

〈ケース2〉

借地権の設定により権利金として5,000万円を取得しました。この借地権の設定をした土地の時価は1億2,000万円です。

権利金の額

土地の時価

5,000万円 ≦ 1億2,000万円 × 1/2

権利金5,000万円は不動産所得になります。また、権利金は所得税法上臨時所得に該当し、平均課税(注)により税額計算することができます。

(注)平均課税とは、原稿又は作曲の報酬・著作権の使用料にかかる所得等年々の変動が著しい変動所得や、3年以上の期間にわたる不動産の貸付の対価として一括支払いを受ける賃借料など臨時に発生する臨時所得については、超過累進税率を適用すると毎年平均的に発生する所得と比較して税負担が過重となるため、これらの変動所得、臨時所得に対して5分5乗方式の税額計算をおこなうことにより税負担の軽減を図るために設けられた制度です。

〈ケース3〉

上記の事例で、この借地権の設定をした土地の時価が8,000万円である場合
なお、この設定をした土地の取得費は、2,000万円で、底地の時価は3,000万円です。

権利金の額

土地の時価

5,000万円 > 8,000万円 × 1/2

権利金5,000万円は譲渡所得となります。また、譲渡所得の金額は以下のようになります。

    ×

権利金の額

= 3,750万円(譲渡所得の金額)

権利金の額

土地の取得費

5,000万円
5,000万円 - 2,000万円

権利金の額

底地価格

    5,000万円 + 3,000万円
■借主の処理

個人・法人ともに償却できない。(資産(権利金)計上) 契約期間満了時に、償却されます。

解 説

借地権の設定により権利金を受け取った場合には、次の区分に応じ、所得税が課税されます。

  1. (1)不動産所得となる場合
    権利金の額 ≦ 土地の時価の 1/2
  2. (2)譲渡所得となる場合
    権利金の額 > 土地の時価の 1/2

譲渡所得とみなされた権利金の取得費は、次の算式により、計算します。

借地権の設定をした土地の取得費 × 権利金の額
権利金の額 + 底地価額

貸主が法人の場合には、権利金の額は、設定時の益金になります。
また、個人の場合の譲渡所得の金額の計算上控除する取得費相当額が損金になります。