個人で事業を営んでおりましたが、資金繰りに行き詰まり倒産してしまいました。その結果、債権者に個人所有の店舗やその敷地が差し押さえられ競売に付されてしまいました。このようにやむなく資産を譲渡した場合においても通常どおり資産の譲渡について所得税が課されてしまうのでしょうか?
資力を喪失して債務を弁済することが著しく困難な場合において、強制執行、担保権の実行としての競売、滞納処分、企業担保権の実行手続きや破産手続きによるいわゆる強制換価手続きにより資産の譲渡があった場合には、その資産の譲渡について一定の要件をもとに所得税を課さないこととされています。なお、一定の要件を満たしていても、その資産が棚卸資産や営利を目的として継続的に売買の対象となっている資産である場合の譲渡による所得はこの限りではありません。
非課税となる取引は次のすべての要件に該当する場合に限ります。
- ①個人が資力を喪失して債務を弁済することが著しく困難であること
- ②その個人について強制換価手続き(強制執行、担保権の実行としての競売、企業担保権の実行手続、破産手続又は滞納処分)が行われたことにより資産を譲渡しており、その譲渡所得があること
この場合の「資力を喪失して債務を弁済することが著しく困難であること」とは、債務者の債務超過の状態が著しく、その者の信用、才能等を活用しても、現にその債務の全部を弁済するための資金を調達することができないのみならず、近い将来においても調達することができないと認められる場合のことをいい、これに該当するかどうかは、競売等によって資産を譲渡した場合の現況によって判断することとされています。