II

保有しているとき(不動産所得等)の税金

1.不動産所得に対する税金

不動産所得の計算

修繕費の判定

貸付けなどの事業の用に使用している建物、建物附属設備などの資産の修繕費で通常の維持管理や修理のために支出されるものは必要経費になります。一般に修繕費といわれるものでも資産の使用可能期間を延長させたり、資産の価値を増加させたりする部分の支出は、所得税法上、資本的支出になります。資本的支出については、支出時の必要経費とせず、取得価額に含めます。
このような修繕費と資本的支出の区別は、修繕や改良という名目によるのではなく、その実質によって判定します。
20万円未満であるものを除き、次のような支出は原則として資本的支出になります。

  • 建物の避難階段の取付けなど、物理的に付け加えた部分の金額
  • 用途変更のための模様替えなど、改造又は改装に直接要した金額
  • 機械の部分品を特に品質又は性能の高いものに取り替えた場合で、その取替えに要した金額のうち通常の取替えにかかる金額を超える部分の金額

なお、上記の基準に照らしてもその修理等のための支出が修繕費か資本的支出か明らかでない場合には、次のいずれかに該当していれば、修繕費として認められます。

  • その金額が60万円に満たない場合
  • その金額が修理等した資産の前年末における取得価額のおおむね10%相当額以下である場合

※「前年末における取得価額」とは、原則前年12月31日に有する、固定資産の最初の取得価額に過去の資本的支出額を加算したものです。

青色申告

不動産所得などが発生する人は、一定の要件を満たす帳簿書類を備え付け、税務署に青色申告の承認申請をして承認された場合は、青色申告書による申告を行うことができます。この青色申告者については、税務上各種の特典が認められています。

◆青色申告の承認申請手続き

新たに青色申告をしようとする場合は、その年の3月15日までに「青色申告承認申請書」を所轄の税務署長に提出してください。なお、その年の1月16日以後に事業を開始した人については、事業開始の日から2か月以内に申請すればよいことになっています。

◆一定の要件を満たす帳簿書類とは

青色申告者は、年末に貸借対照表と損益計算書を作成することができるような正規の簿記の原則に従った記帳により帳簿を作成することが原則ですが、事業的規模以外の場合には、現金出納帳、売掛帳、買掛帳、経費帳、固定資産台帳のような簡易な帳簿を備え付けるだけでもよいことになっています。これらの帳簿および書類などは、原則として7年間保存しなければなりません。

Q&A2
居住用と併用の場合の費用区分
◆青色申告の主な特典

〈青色申告特別控除〉

以下の要件を満たしていれば不動産所得から55万円、65万円又は10万円を控除することができる制度です。

55万円の控除が受けられるための要件

  • 事業的規模(→こちらをご参照ください)により不動産の貸付けを行っていること
  • 正規の簿記の原則(一般的には複式簿記)により取引を記帳していること
  • 確定申告書に貸借対照表・損益計算書を添付して、申告期限内に提出すること

65万円の控除が受けられるための要件

  • 55万円の控除が受けられるための要件に該当していること
  • 申告期限内に電子申告(税理士が代理で行う電子申告を含む)により提出すること又は電子帳簿の保存を行っていること。(→こちらをご参照ください)

〈青色事業専従者給与〉事業的規模(→こちらをご参照ください)で不動産の貸付けを行っている場合に限ります。

青色申告者と生計を一にしている配偶者その他の親族のうち、年齢が15歳以上で、その青色申告者の事業に専ら従事している人(青色事業専従者)に支払った給与は、事前に提出した「青色事業専従者給与に関する届出書」に記載された金額の範囲内で労務の対価として適正な金額(注)であれば、必要経費として認められます。なお、青色事業専従者として給与の支払いを受ける人は、配偶者控除や扶養控除の対象とはされません。

(注)労務の金額として適正な金額とは次の状況で判断されます。

  1. ①専従者の労務に従事した期間・労務の性質及びその程度。
  2. ②事業に従事する他の使用人の給与及び同種同規模の事業に専従する者の給与の状況。
  3. ③事業の種類・規模及び収益の状況。

〈純損失の繰越〉

不動産所得が赤字になり純損失が生じたときには、その損失額を翌年以後3年間にわたって、各年分の所得から差し引くことができるというものです。

Q&A3
事業的規模とは