11.同族会社の株価評価
(「5.同族会社の株価評価」もあわせてご参照ください。)
日本の会社の実に90%以上が同族法人です。この同族法人は事実上オーナーの所有と同様の組織になっています。そのため、オーナーの相続時には、上場企業の株式と異なり売却が困難な同族株式を、しかも土地などの資産価値を反映させるため高額な評価額で相続することになります。同族会社の関係者にとって、場合によっては相続税負担のため事業の存続が不可能ともなりかねません。そのため同族会社のオーナーとその家族のみなさんは、同族株式を毎年評価し、上手な相続対策を考える必要性があります。
(1)同族株式の評価の前提
A社は機械部品の製造会社(同族会社)です。株価の評価をします。
【資料1】A社の会社概要
資本金 | 1,000万円 |
発行済み株式数 | 20,000株 |
売上高 | 3億円 |
従業員 | 70人 |
決算期 | 3月 |
相続税評価上の会社規模 | 中会社の中 |
【資料2】A社の1株50円換算の比準要素
区 分 | A 社 | 類似業種 |
類似業種の株価 |
- | 350円 |
1株当たりの配当金 | 4.0円 | 3.6円 |
1株当たりの利益金額 | 35円 | 24円 |
1株当たりの純資産価額 | 250円 | 270円 |
【資料3】4月末のA社の総資産価額
区 分 | 総資産価額 | 負債金額 |
帳簿価額 うち土地の簿価2,000万円 |
10,000万円 | 5,000万円 |
相続税評価額 うち土地の相続税評価額30,000万円 |
38,000万円 | 5,000万円 |
(2)株式の評価
※→こちらをご参照ください。
■ 4月末における純資産価額方式による1株当たりの評価額
(38,000万円 - 5,000万円)-{(38,000万円 - 5,000万円)-(10,000万円 - 5,000万円)}× 37% | = 11,320円 |
20,000株 |
■ 4月末における類似業種比準価額による1株当たりの評価額
①1株(50円)当たりの株価
350円 × | ( |
4.0 | + | 35 | + | 250 | ) |
× 0.6 = 243.6円 |
3.6 | 24 | 270 | ||||||
3 |
②1株当たりの資本金
1,000万円 ÷ 20,000株 = 500円
③1株当たりの類似業種比準価額
243.6円 ×(500円/50円)= 2,436円
■ 4月末における原則的評価方式により1株当たりの評価額
A社の会社規模………中会社の中
従って
|
} |
いずれか低い方 |
|
①併用方式
2,436円 × 0.75 + 11,320円 × (1 - 0.75) = 4,657円
②純資産価額方式
11,320円
③ ①と②のいずれか低い方
4,657円
■ 4月末における特例的評価方式(配当還元方式)により1株当たりの評価額
配当還元価額
4円 | × | 500円 | = 400円 |
10% | 50円 |
解 説
同族会社の株式の評価の計算は「相続」や「贈与」の時はもちろん、同族関係者間での株式の売買や従業員持ち株制度での売買、企業買収による価格算定等の基礎などと幅広く利用されます。株価計算の仕組みを理解することで株価を下げる対策や、事業承継対策を考えられることになります。