VII

ケーススタディ

1.土地等の負債利子の損益通算の特例

(「損益通算」もあわせてご参照ください。)

通常、不動産所得・事業所得・山林所得・一定の譲渡所得の損失は給与所得等その他の所得と損益通算することができます。給与所得は所得税が源泉徴収されていますので、給与所得の源泉所得税は、確定申告で還付されることになります。しかし、不動産所得の損失については例外があります。不動産所得の損失の中に土地購入のための借入金利息がある場合は、損失の金額のうち一定額が損益通算の対象になりません。そのため多くの場合不動産所得の損失があっても、税金が還付されるという事はあまり期待できないことが多いようです。

前提条件

〈土地購入のための借入金利息を算出〉

土地の取得価額は1,200万円、建物の取得価額は800万円の不動産を、借入金の額1,000万円、自己資金1,000万円で取得しました。必要経費に算入した負債の利子の額は90万円で、この負債の利子は、平成30年中に取得した土地建物の負債額に対するものです。なお、平成30年分の給与所得の金額が500万円あります。

●土地の取得に要した借入金の額

借入金額  

建物の取得価額

 

1,000万円

800万円 = 200 万円

(注)まず、建物の取得の対価に充てられ、残額が土地の取得の対価に充てられたものとして計算します。

●土地の取得に要した借入金の利子の額

90万円 × 200万円 = 18万円
1,000万円

特例となるケース

ケース1

平成30年分の不動産所得の金額の計算上、損失の金額が45万円生じた場合(借入金利息が損失の金額より小さい場合)

●損益通算の対象とならない利子の額

45万円 > 18万円

生じなかったものとみなされる
金額18万円

損益通算の対象とならない利子の額

●平成30年分の総所得金額

給与所得   損益通算できる損失の額  
500万円 (45万円 - 18万円) = 473万円
ケース2

平成30年分の不動産所得の金額の計算上、損失の金額が10万円生じた場合(借入金利息が損失の金額より大きい場合)

●損益通算の対象とならない利子の額

10万円 < 18万円

生じなかったものとみなされる
金額10万円

損益通算の対象とならない利子の額

●平成30年分の総所得金額

給与所得   損益通算はなし  
500万円 (10万円 - 10万円) = 500万円
解 説

ケース1では不動産所得の損失が45万円あるにもかかわらず27万円だけが損益通算の対象になる損失で、ケース2では不動産所得の損失が10万円ありますが、全額損益通算の対象になりません。
現在は

  1. 不動産購入金額に対して家賃収入の利回りが3~8%と高水準である
  2. 市場金利が低金利である
  3. 建物の減価償却費が定額法しか選択できない

等の理由により不動産所得自体がマイナスになる事例は少ないようです。