III

売却時の税金

2.譲渡所得と取得費・譲渡費用

譲渡費用

譲渡費用とは不動産の譲渡の際に直接出費した費用で、下表のようなものが対象となります。

譲渡費用
  • 仲介手数料
  • 売買契約書の印紙代、登記に関する手数料等
  • 測量費用・分筆費用
  • 更地で売る時の建物取壊費用など
  • 売却のために借家人を立ち退かせるために支払った立退料
  • 売却のために行った建物の補修費
  • 買主と交渉のために要した交通費など

特別控除額

種 類 内 容 特別控除
収用等の特別控除 土地収用法、都市計画法等により資産が収用された場合 5,000万円
特定土地区画整理事業等の特別控除 特定土地区画整理事業等のために資産が買い取られた場合 2,000万円
特定宅地造成事業等の特別控除 特定住宅地造成事業等のために土地等を譲渡した場合で一定の要件を満たす場合 1,500万円
2009年(平成21年)・2010年(平成22年)取得土地等の特別控除 2009年(平成21年)及び2010年(平成22年)に取得した土地等を譲渡した場合 1,000万円
低未利用土地を譲渡した場合の控除 都市計画区域内にある低未利用土地で上物を含めた価額が500万円(一定の場合は800万円)以下のものを譲渡した場合で、一定の要件を満たすもの 100万円
【参考】居住用財産の特別控除 自己の居住の用に供されている家屋及びその敷地の用に供されている土地等を譲渡した場合 3,000万円
【参考】空き家の特別控除 被相続人の居住用家屋(空き家)を譲渡した場合で一定の要件を満たす場合 3,000万円

損益通算

土地・建物等の長期譲渡所得の金額の計算上生じた損失の金額および、土地・建物等の短期譲渡所得の金額の計算上生じた損失の金額については、原則として土地・建物等の譲渡による所得以外の所得との損益通算および翌年以後の繰越は認められません。また、土地・建物等の譲渡による所得以外の所得の金額の計算上損失が生じた場合には、土地・建物等の長期譲渡所得の金額および、土地・建物等の短期譲渡所得の金額との損益通算も認められません。一定の居住用の土地・建物の譲渡損失については、特例として他の所得との損益通算と繰越控除ができます。

損益通算

[参考]居住用不動産の譲渡損失の繰越控除

マイホームの譲渡損失の金額については、買換え資産につき償還期間10年以上のローンを組む等一定の要件を満たすことにより、その年の他の所得と損益通算し、また、その年に相殺しきれなかった損失は翌年以後3年間の所得と相殺(繰越控除)することができます。
合計所得金額が3,000万円超の年分については繰越控除は適用不可ですが、譲渡の年については所得制限がなく、所得が3,000万円超の場合でも損益通算が可能です。
高額所得者がマイホームの買換えをする際にローンを組まずとも現金購入が可能な場合であっても、敢えて償還期間10年以上のローンを組むことにより損益通算が可能となり、税金の還付を受けることが可能となる場合もあります。

(例)2023年(令和5年)にマイホームの譲渡損失が生じ、その後退職して2026年(令和8年)の所得が3,000万円以下となった場合

2023年
(令和5年)
譲渡の年
2024年
(令和6年)
2025年
(令和7年)
2026年
(令和8年)
所得 3,000万円超 3,000万円超 3,000万円超 3,000万円以下
損益通算 ○(可能) ── ── ──
繰越控除 ── ×(不可) ×(不可) ○(可能)
Q&A10
保証債務の履行による不動産の譲渡所得
Q&A11
資産の競売と譲渡所得税課税