VII

ケーススタディ

3.含み益と含み損の内部通算

土地、建物等の短期又は長期譲渡所得の金額の計算上生じた損失の金額については、他の所得との損益通算ができず、切り捨てられることになります。ただし、同じ年に売却した土地、建物等の譲渡損と譲渡益については、通算することができます。

同族会社に賃貸している土地・建物(共に先代から相続により取得)を同族法人に売却したところ、多額の譲渡益が生じたため、含み損のある別荘を親族に売却した。

■賃貸物件

①収入金額

7,000万円(譲渡代金)

②取得費・譲渡費用

7,000万円 × 5%(概算取得費)+ 150万円(譲渡費用)= 500万円

③譲渡所得

7,000万円 - 500万円 = 6,500万円

■別荘

①収入金額

1,000万円(譲渡代金)

②取得費・譲渡費用

3,000万円(取得費実額)+ 100万円(譲渡費用) = 3,100万円

③譲渡所得

1,000万円 - 3,100万円 = ▲2,100万円

■所得税・住民税

①賃貸物件のみを譲渡した場合

6,500万円 × 20.315% = 1,320万円

②賃貸物件と別荘を同一年中に売却した場合

(6,500万円 - 2,100万円) × 20.315% = 893万円

(注)税額計算は円単位で計算しますが、便宣上「1万円未満」を切り捨てて計算しております。

解 説

内部通算により、所得税・住民税が約427万円減少しました。別荘のみの譲渡を行った場合の譲渡損失には切り捨てられることになります。

また、所有期間が5年以下の短期譲渡所得の譲渡損と所有期間が5年超の長期譲渡所得の譲渡益についても、内部通算は可能となります。

なお、親族や同族会社との間で不動産売買を行う場合には、時価よりも低い価額での売買とならないように注意する必要があります。