VII

ケーススタディ

4.生前贈与の特例の活用

被相続人が生前に財産を贈与すれば、相続財産が減少し相続税額を減少させることができますが、贈与税率は相続税率に比し高い税率になっているため、相続税額を減少させることはできても、贈与税額を含めた納税額を減少させることはできません。しかしながら最近の動向として、生前贈与を奨励する贈与税の特例が数多く作られています。これらの特例をうまく活用することにより、相続対策につながります。

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制度
(方法)
一般的な贈与 相続時精算課税制度 相続時精算課税制度
(特例)
おしどり贈与
概要 基礎控除110万円の非課税枠を利用して、毎年贈与をする方法。長い期間多数の人に贈与をすることで、より多くの相続財産を圧縮することができます。 親や祖父母から財産を贈与してもらう場合、
2,500万円まで贈与税が非課税となる制度。
婚姻期間20年以上の配偶者間でマイホーム・マイホーム購入資金の贈与を行う場合に、2,000万円まで贈与税が非課税となる制度。
贈与者 不問 60歳以上の
親、祖父母
親・祖父母
(年齢制限なし)
夫(妻)
受贈者 不問
(一般的には15歳以上が目安)
18歳以上の直系卑属

※2022年(令和4年)3月31日以前は20歳。

妻(夫)
贈与財産 財産不問 財産不問
  • マイホーム購入資金
  • 一定のリフォーム資金
  • マイホーム(土地・建物)
  • マイホーム購入資金
非課税額 1年あたり110万円 2,500万円
2024年(令和6年)1月1日以後は、
別枠で1年あたり110万円
2,000万円
主な注意点 2の相続時精算課税制度を選択している場合には利用できません。 贈与された財産は相続発生時に相続財産に加算され、
相続税の課税対象となります。
一生に一度しか
適用ができません。
申告義務 110万円以下の贈与であれば
申告不要
贈与の翌年2月1日より3月15日までに贈与税の申告 贈与の翌年2月1日より
3月15日までに贈与税の申告
相続対策※

ただし、相続開始前3年以内の贈与は、相続財産に加算します(相続により財産を取得しない人は相続財産に加算しません)。※「生前贈与加算」参照

贈与する財産の価値が、相続時に上昇すると
予想される場合は有効。

例えば、夫に適用される相続税の税率が高いことが予想され、かつ妻は相続税がかからない(もしくは妻に適用される税率が低い)ことが予想される場合には有効。

※: ○は相続対策として有効