VII

ケーススタディ

9.土地と建物の所有者が異なる場合について

土地の所有者とその土地上の建物の所有者が相違する場合、通常建物の所有者にはその建物が存在する期間、その土地を使用する権利が生じます。この土地を使用する権利を借地権といいます。この借地権の価格はその土地の利用価値により異なり、その土地の所有権の価格に連動します。また建物の所有者と土地の所有者の相違(法人と個人)や地代の授受があるかないか、借地権売買の慣習がある地域かそれ以外の地域か等により取扱が相違するきわめて複雑な内容になっています。

(1)個人の土地に法人の建物

借地権の設定により権利金の授受があった場合には、個人(地主)はその対価の額に対し、不動産所得又は譲渡所得として所得税が課税されます。法人は、権利金を支払って、借地権を取得したことになります。
これに対し、借地権の設定により権利金の授受がなかった場合には、個人は課税されませんが、法人は、地主から権利金相当額の贈与があったもの(受贈益)となり、収入として法人税が課税されます。
しかし、借地権設定時に権利金の授受がなかった場合においても

①「土地の無償返還に関する届出書」を税務署に提出したとき

②個人と法人との間で相当の地代(注)の授受があったとき

のどちらかの場合では、法人において権利金相当額の収入課税がされないようになっています。
①「土地の無償返還に関する届出書」は、「法人が建物を撤去する際、個人に無償で土地を返還する」という内容の届出書を土地所有者の個人と建物所有者の法人が共同で提出します。これにより、個人が所有する相続税法上の土地評価は、路線価格×80%となり、貸家建付地の評価減とほぼ同等の評価となります。(法人の株価評価に際しては、路線価格×20%の借地権として計上して計算しなければなりません。)

(注)相当の地代 = 過去3年間の土地の相続税評価額の平均額 × 6%

①個人の土地に法人の建物

(注)→こちらをご参照ください。

(2)父の土地に子の建物

父の土地に子が建物を建築した場合には、親子間で土地の地代の授受を行わない、又は地代が概ね固定資産税相当額以下であること(使用貸借)が通常であると思います。この場合、子に対して借地権相当額の贈与はなかったものとされています。したがって、子に借地権は生じないことになります。

②父の土地に子の建物