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ケーススタディ
10.定期借地権(保証金方式・権利金方式・前払賃料方式)の課税関係
借地権は土地の利用権として、その利用者が利用を望む限り永久にその権利が利用者に帰属します。そのため土地の所有者は土地を第三者に賃貸することに慎重になり、土地の有効活用が停滞します。この欠陥を補完するためにできた制度が定期借地権の制度です。自分の土地を手放さずに、事前に決められた期間中第三者に土地を賃貸することにより有効な活用を促進します。
(1)保証金方式
■保証金
期間満了時に返還しなければならない金銭。土地所有者にとっては、長期に渡る債務となります。
■貸主の処理(個人)
取得した保証金を運用した場合の経済的利益の取扱い
〈ケース1〉
賃貸マンションの所有の目的のために、定期借地権の設定をし、1億円の保証金を受け取りました。
(契約期間は、2025年[令和7年]1月〜2074年[令和56年]12月の50年間)
保証金の運用方法
a.駐車場用地の取得3,000万円
b.自宅の増築のための資金500万円
c.大口定期預金5,000万円
d.株式取得資金1,500万円
(注)2025年(令和7年)の10年長期国債の平均年利率は0.5%と仮定する
不動産所得の総収入金額
(500万円 + 1,500万円)× 0.5% = 100,000円
■借主の処理
個人・法人共に償却できません(資産(保証金)計上)。→保証金の返還請求権あり。
解 説
定期借地権の設定により保証金を受け取り、その保証金を運用している場合には、次の運用の区分に応じ、その保証金の経済的利益の計算をします。
- (1)不動産所得や事業所得などの運転資金や、業務用資産の取得資金として運用した場合
保証金の経済的利益の額を、その年の不動産所得の総収入金額に算入すると共に、同額をその業務に対する所得の計算上、必要経費に算入することになりますので、課税関係は発生しません。 - (2)預貯金、公社債、指定金銭信託、貸付信託などの金融資産に運用した場合
保証金の経済的利益の額を、計算する必要はありません。 - (3)上記以外の運用の場合
保証金の経済的利益の額を、その年の不動産所得の総収入金額に算入します。
従って、a は(1)に該当し、c は(2)に該当します。 b と d は(3)に該当しますので、経済的利益を不動産所得の総収入金額に算入しなければなりません。なお、経済的利益の計算については、10年長期国債(注)の平均年利率により計算します。
(注)国税庁より公表されます。
法人・個人共に保証金を負債(預かり保証金)計上することについては課税関係はありません。
(2)権利金方式
■権利金
返還を要しない金銭。受け取った時に一括して収入となります。
■貸主の処理
借地権の設定により権利金等を受け取った場合の課税(個人の場合)
〈ケース2〉
借地権の設定により権利金として5,000万円を取得し、この借地権の設定をした土地の時価が12,000万円の場合
|
権利金の額 |
土地の時価 |
| 5,000万円 ≦ | 12,000万円 × 1/2 |
権利金5,000万円は不動産所得になります。また、権利金は所得税法上臨時所得に該当し、平均課税(注)により税額計算することができます。
(注)平均課税とは、作家や芸術家など収入が不安定な「変動所得」や、不動産の貸付けにおいて一時に受け取る権利金や借地権の譲渡承諾料などの「臨時所得」について、税負担が急激に増加することを防ぐための制度です。
具体的には過去数年間の所得を合計し、その平均所得に基づいて税額を算出して、各年の所得に応じて分割して納税する方法です。これにより所得が大きく変動する場合でも税負担が平準化され、安定した納税が可能となります。
〈ケース3〉
上記の事例で、この借地権の設定をした土地の時価が8,000万円である場合
なお、この設定をした土地の取得費は、2,000万円で、底地の時価は3,000万円とする
|
権利金の額 |
土地の時価 |
| 5,000万円 > | 8,000万円 × 1/2 |
権利金5,000万円は譲渡所得となります。また、譲渡所得の金額は以下のようになります。
| × |
権利金の額 |
= 3,750万円(譲渡所得の金額) | |||
|
権利金の額 |
土地の取得費 |
5,000万円 | |||
| 5,000万円 - | 2,000万円 |
権利金の額 |
底地価額 |
||
| 5,000万円 + | 3,000万円 | ||||
■借主の処理
個人・法人共に償却できない(資産(権利金)計上)。契約期間満了時に、償却されます。
解 説
借地権の設定により権利金を受け取った場合には、次の区分に応じ、所得税が課税されます。
- (1)不動産所得となる場合
権利金の額 ≦ 土地の時価の 1/2 - (2)譲渡所得となる場合
権利金の額 > 土地の時価の 1/2
譲渡所得とみなされた権利金の取得費は、次の算式により、計算します。
| 借地権の設定をした土地の取得費 | × | 権利金の額 |
| 権利金の額 + 底地価額 |
貸主が法人の場合には、権利金の額は、設定時の益金になります。
(3)前払賃料方式
■前払賃料
返還を要しない金銭。但し、定期借地契約が解約になった場合には、未経過分は返還が必要となります。
■貸主の処理
受け取った一時金を「前受収益(負債)」として計上し、設定した期間に応じて各年分の収入金額に算入します。
■借主の処理
支払った一時金を「前払費用(資産)」として計上し、設定した期間に応じて各年分の必要経費に算入します。
解 説
前払賃料方式により処理する場合には次の要件を満たしている必要があります。
- 一時金が前払賃料であり、それが契約期間又は契約期間のうち一定期間について、賃料の一部又は全部に、均等に充当されていることを定めた定期借地権設定契約書(国税庁の書式に準拠したもの)により契約したものであること
- a の契約書を契約期間にわたって保管していること
- 取引の実態がその契約に沿うものであること
なお、前払賃料は、消費税法上非課税となる土地の貸付けの対価の前受金に該当するため、貸主である消費税の課税事業者は、仕入控除税額の計算にあたり、その年分の賃料に相当する金額を課税期間の「資産の譲渡等の対価の額」に算入し、課税売上割合を計算する必要があります。また、借地権者においては、仕入税額控除の対象とはなりません。
- 企画・発行
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三井不動産リアルティ株式会社
東京都港区霞が関 3-2-5 霞が関ビルディング
https://www.mf-realty.jp/
- 監修
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東京シティ税理士事務所
税理士 山端 康幸
https://www.tokyocity.co.jp/




